top of page

亀のといち

13年近く連れ添った亀が、突然死んでしまった。

あっというまの出来事だった。

梅雨の合間の夏日。

元気にバチャバチャ暴れていて、 ああ、暑くて嬉しいねーと思ってエサをやり しばらくしたらひっくり返っていて 

 そのまま動かなくなった。

病気もせず、エサもよく食べ

特に物言わぬ生き物だったから

どこか

植物を可愛がるような感覚に似ていると思っていた。

でも違った。

トイチは植物なんかじゃない。

声を出せない身体で必死に

わたしになにか言おうとしていた。

その姿は、元気に喜んでいたんじゃなくて

苦しんでいたんだと思うと本当にいたたまれない。

亀の死因や暴れる理由を調べてみると

トイチの状況からいって

熱中症だった。

体温を変えられない亀は

気温の上がった水槽の中で

暑くて、ここから出してほしくて、

辛くて辛くて、苦しくて死んだ。

もし、自由の身だったら

自分で涼しい所へ行ったり、水に入ったりできる。

トイチは私のペットだから、自由ではない。

自由ではないが、

トイチができるだけしたいようにし、お腹がすかないようにし、居心地よい場所に置き、気持ちよく生活できるようにするのが私の役目。 

トイチの命を預かっているのは私だ。

なのに

その責任を放棄した。

声なき声をとどけようとしてくれていたのに

その姿を見ていながらも

わかってあげられなかった。

私が殺したのも同然だ。

まだまだ元気に生きられたはずだ。

東京の1人暮らしが寂しくて飼った初めての同居人。たかが亀、されど私にはたくさんトイチとの思い出がある。小さくて綺麗だったトイチ。

こうなってから

あーしてあげればよかった

こんな事するんじゃなかった

もっともっと可愛がってあげれば

こんな事にならなかった。

止まない後悔がぐるぐるぐるぐる。


bottom of page