もういない
14年ぶりに、教え子と母校を訪れた。
学生の頃、週4くらいで食べていた油そばは、タレの味が変わっていた。
売店のおばちゃんの顔は忘れていたけど、声で思い出した。
いつも座っていたあたりに腰掛ける。
アトリエよりもここにいる時間の方がながかったんじゃないかな。
逃げるように潜んでいた時もあったし
友達の恋愛相談にのってた時もあった。
アトリエよりも心地よかった。
ここで一緒にいた友達、先生はいない。
迷走していた20代の私ももういない。
満たされていたはずなのに、決して満たされた気持ちにはなれなかった。
幸せだったはずなのに、いつも幸せとは感じられなかった。
今ならまっすぐに
「あの時間は、若葉のような輝いてた時間だった。」といえるのに。
向かい合わせで油そばを食べながら、17歳の教え子は
「いつでも食べれるし、いつでも寝れる。」という。
遅く寝ても同じ時間に起きてしまうし、一食減らしてもどうということはない自分は
確実に老いていて
それでも、あの頃は知らなかった感情の数々を持っていて
それはそれで切ない宝物だと
薄いお茶を呑みながら想った。